TIG溶接
弊社が主力としているTIG溶接の説明をします。
TIGとはTungsten Inert Gasの略です。
タングステン電極を使用し、不活性ガスを使用して溶接部のシールドを行うアーク溶接の一種です。
アルゴン溶接と言ったりもします。
その名の通り、シールドガスにアルゴンガスを用います。ヘリウムガスを用いる事もあります。
TIG溶接のメリットを以下にまとめます。
TIG溶接のメリット
- 溶接の仕上がりが綺麗。
- スラグやスパッタ(火花)がほとんどでない。
- 安定したアークにより長時間溶接が出来る。
- 自由な姿勢による溶接が可能。
- 薄物や厚物等製品に左右されず溶接が可能。
- あらゆる金属の溶接が可能。
- 細かい箇所なども柔軟に対応出来る。
以下にデメリットをまとめます。
TIG溶接のデメリット
- 半自動溶接等に比べ時間がかかる。
- 風の影響をうけると溶接が出来ない。
- 不活性ガス(アルゴンガス)のコストがかかる。
- 溶接をする人(熟練度)により仕上がりが大きく変わる。
溶接ビード
以下にTIG溶接のビード(溶接部分の外観)と半自動溶接のビードの違いをご紹介します。
以下の写真は全て紹介用のサンプルであり、製品ではありません。
注記:製品ではありません。SS400
たまたま弊社で使っている治具に半自動溶接とTIG溶接の両方で製作した物がありましたので紹介します。上が半自動溶接、下がTIG溶接です。
上浮かし溶接。下ローリング。
SUS304 TIG溶接
SUS304ローリング隅肉 TIG溶接
SUS304浮かし隅肉 TIG溶接
SUS304 なめ付け(共付け)溶接
SUS304 浮かしTIG溶接
基本的にTIG溶接はうろこ状のビードになります、一方半自動溶接はうろこ状にはならず一定の盛り上がりが続きます。
ただしTIG溶接でも必ずうろこ状のビードになるわけではありません。
なめ付け(共付け)やローリング等の溶接をするとうろこ状のビードにはなりません。
うろこの細かさ、ビード幅、全て溶接する人の技量で変える事ができます。
溶接棒
TIG溶接では溶接棒を片手に持って使用します。
溶接棒の材質、種類もたくさんあるのですが、例えば一般的によく使われるSUS304の溶接に使用されるSUS308の溶接棒
同じSUS308の溶接棒でも線形が、0.8mm、1.0mm、1.2mm、1.6mm、2.0mm、2.4mm、3.2mm、4.0mm等々
同じSUS308の溶接棒でも太さの種類がたくさんあります。基本的にはどの溶接棒も全て5キロ単位で購入になります。
母材の厚みや脚長、肉盛り量等で選別していきます。
溶接棒の使用間違いを防ぐ為に片側の端にわざと色が付けられています。例えばSUS308は黄色、SUS309は黒など。
実は溶接棒には使用する向きがあるんですね、色が付いている方を溶かしてしまうとこの溶接棒はSUSの何なのかがわからなくなると言う状況に陥ってしまいます。見た目で判断はほぼ不可能です。
ですから溶接する時にうっかり反対側から溶接してしまうと言う事が無いよう注意して溶接しなければなりません。
多分308だろう、多分これは316Lだろうという事はもちろんできません。両側に色分けがない溶接棒は使用不可になります。
これは余談ですが、溶接棒の線形は太ければ太いほどキロ単価は少し安くなります。
1.0mmで溶接と4.0mmで溶接では4.0mmの方が溶接棒自体のコストは落とせます。
ですが薄板に4.0mmの溶接棒は使用しません。電流を上げないと溶接棒自体が溶けないですし、
薄板は電流を上げるとすぐに穴が開いてしまうからです。
その逆に脚長や開先が大きい製品に1.0mmの溶接棒も使用しません、肉盛り量が多いのに細い線形で溶接すると時間がかかりますし
無駄に熱量が加わる事で歪が大きくなるからです。
その製品に適した溶接棒を選定する事が大切です。
弊社では様々な溶接にすぐに対応できるよう、多種多様な溶接棒を常に用意しておりますのでご安心ください。
タングステン電極
TIG溶接機のトーチの先に付いている電極があります。
これはレアメタルのタングステンが使用されています。
何故TIG溶接の電極にタングステンを使用しているのか簡単に説明すると熱に強いからです。
鉄やステンレスの融点は約1500℃、アルミニウムは約600℃です。
タングステンは金属の中で最も融点が高く、約3400℃です。
タングステンとはスウェーデン語で「重い石」という意味があります。
その名の通りタングステンは非常に重いです。
タングステンは非常に重く、最も熱に強い最強な金属です。ですからもちろん高価です。
そして放射線遮蔽能力が高いため、レントゲンX線CT等で遮蔽材としても使用されています。
タングステン電極にも種類があり、純タングステン、トリウム入りタングステン、
セリウム入りタングステン、ランタン入りタングステン、主に直流、交流での使い分けになります。
溶接棒と同じように、タングステン電極も色分けされています。
- 緑 純タングステン
- 赤 トリウム2%入りタングステン
- 青 ランタン2%入りタングステン
- 灰 セリウム2%入りタングステン
タングステン電極も溶接棒同様に使う向きがあります。
トリウム入りタングステンは、微量ながらも放射性物質を含んでいます。
その為弊社では、トリウム入りタングステンは使用しておりません。
タングステン電極にも溶接棒と同じように、1.0mm、1.6mm、2.4mm、3.2mm、4.0mm等線形に色々種類があります。
これも母材の厚み、材質、溶接電流等でその製品に合った電極棒を選ぶことになります。
薄板は細いタングステン電極、厚板は太いタングステン電極等。
タングステン電極の先端を研磨して尖らせて使うのですが、その尖らせる角度によっても溶け込み方が変わります。
鋭角に研ぐとアークが広がりやすく、鈍角に研ぐとアークが一点に集中します。
溶接は意外と奥深い
この様に溶接と言っても色々な種類の道具、やり方が存在します。
上田製作所では、その中からその製品に適した溶接方法をしっかりと考え、溶接不良を出さないよう日々努めています。
溶接や金属加工でお困りでしたら上田製作所にお任せください。